月刊書字文化

~日本書字文化協会機関紙 No61~
平成30年 11月号

一般社団法人日本書字文化協会機関紙
編集長 渡邉啓子
一般社団法人日本書字文化協会
代表理事・会長 大平恵理
〒164-0001 中野区中野2-11-6  丸由ビル301
電話03‐6304‐8212  FAX03‐6304‐8213
Eメール info@syobunkyo.org

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目次

◇第7回伝統文化大会要項、課題など発表
◇2年目の検定・ライセンス制度改革まとめ
◇コラム「こころ」(大平恵理)
◇第7回総合大会優秀作品展示・交流会開く
◇東・西・南・北(大阪、橋爪綾音)


ホームページ大会結果欄で「第7回総合大会」の結果掲載が始まりました。フロントページの横タスクバーの右から2つめ「大会」にカーソルを当てると項目欄が出ます。その中の「結果発表」をクリックしてください。目下、各コンクールの文科大臣賞から優秀特選ベスト10までの受賞者名が掲示されています。後日、教育特別奨励賞を除く特別賞作品約130点の作品画像も掲示予定。個別ダウンロード用ページ付きです。

 

第7回伝統文化大会

 実施要項、指定課題・解説を発表

日本の伝統文化の華ともいえるお正月の習俗にちなんだ全国書写書道伝統文化大会は、平成31年1月18日(金)応募締切で開催されます。大会を構成する「全国年賀はがきコンクール」(硬筆)と「全国学生書き初め展覧会」(毛筆)の指定課題の共通テーマは「新年の抱負」です。指定課題と解説はホームページで見ることができます。平成最後の年の初め、貴方の力を全国レベル審査で試してみませんか。
(ホームページ当機関紙ウエブ版に実施要項、課題・解説)

 

大会の特色

指導の連携 

書写書道教育の権威者らが、流派を超えて公正中立に審査します。最終的に書文協中央審査委員会が上位賞を決定しますが、金銀銅賞については指導教室の一審を原則的に尊重し、指導の連携を図ります。

他大会作品課題も受付 

他大会への出品課題でも自由作品の部で受付。全国レベルでの位置づけが分かります。

③お手本

お手本通りと言うのではなく、字体や配列などを学ぶことを期待しています。揮毫者は「用美一体を究めた文字」と評価される大平恵理・書文協会長です。書く実用性と審美を兼ね備えることが書文協の書写書道の目標です。

④「評価の観点」

大会参加がそのまま学びとなるよう「評価の観点」を公表しています。評価の観点は「とめ・はね・はらい」などチエックポイントを50項目に分けたもので、大会課題のどの書き方がチエックされるのかを示すものです。

「園・学校特典」

幼・保園、学校がまとめて出品される時、一人当たり参考手本と年賀はがきコンクール応募清書用紙2枚が無料提供されます。(送料はご負担ください)

 

創立10周年(2020)目指し、改革2年目

検定・ライセンス制度の将来は

書文協は昨年9月下旬の会員総会で、検定・指導者ライセンス制度改革を打ち出しました。それから1年。今年は夏の相次ぐ災害のため各教室が取りこんでおり、9月24日の中央審査会当日恒例の会員総会は中止しましたが、当機関紙上で今後の方針を発表します。これまで、月刊書字文化に掲載してきたものを中心にまとめたものです。ご意見、ご質問を何なりと書文協本部にお寄せください。

<目標>

書文協の中心事業として検定・ライセンス試験を位置づける。本人の技量向上だけでなく、社会的評価の高い制度とし、検定は各種内申などにも効果あるものを目指す。指導者ライセンスは、実際にサークルなど現場で役立つことを大事にする。

<検定試験>

  • 硬筆は楷書・行書に分かれている検定を一本化した新硬筆検定(硬筆課題検定)を2014年に新設。
  • 毛筆は2020年度に半紙検定、本検定を一本化した「新毛筆検定」をスタートさせる。
  • 検定の一分野として、連綿、百人一首などカルチャー部門を置く。 これにより検定は硬筆、毛筆、カルチャーの3部門となる(2020年度以降)
  • 検定は偶数月に実施する。該当月の20日までに受験作品を本部に送付、翌月15日を目途に返送する。
  • 毎回の検定受験課題数に制限は設けない。
  • 新硬筆課題検定添削指導コースを設けた(平成30年秋)
  • 従来の検定価格を改定

(新硬筆関連の実施概要、従来検定からの移行のための特別段級認定制度、添削指導コースなどの文書は、ホームページの「検定・ライセンス」ボタンより入った中段「検定試験の種類」、月刊書字文化ウエブ版資料編を参照してください)

<ライセンス試験>

  • 検定成績と切り離し実施 現行は検定試験の1番課題からAまたはS合格で埋ると一定の課題数ごとにライセンス試験の受験(無試験での段級申請含む)ができる仕組みだが、新制度では、検定成績が条件とはならない。
  • 指導者に必要な資質を求める点も加味 新制度では、作文などで受験者の書写書道及び指導者観を問う出題も含める。
  • ライセンス試験は何種にも分かれているが、検定と同一種類とする(2020年度から)。資格も現行の10段階から、初級・中級・上級・師範の4段階とし、皆に分かり易く、より実用的なライセンスとする。
  • ライセンス試験は年2回、5月と11月、その手続き期間は前々月の3月、9月とする。

<現行制度との関係>

  • 現行の検定の段級・ライセンス資格は永久保存され、本人及び在籍教室の要求により記録が当人に開示される。また、内申資料として記録書が発行される(有料)
  • 新検定が実施された場合、新たに旧検定での受験は認めない。
  • ただし、すでに検定受験を実施している教場は、教場指導の安定性を重視した措置として新入生を含め旧検定・ライセンスでの受検を認める。
  • 検定料金は平成30年10月から改定。新たに検定を始める人は新料金とする。ただし、すでに検定受験をしている人は平成31年4月から適用する。
  • 検定テキストは新硬筆検定を除き平成30年3月から販売を中止した。このため現行テキストのコピー使用を許可する。

<検定の改訂後の受験料>

こころ

大平 恵理(書文協会長)

AIと書写書道

AI(人工知能)という言葉を最近よく目にします。詳細にプログラミングしたコンピュータをロボットに入れて人間の作業をするAIロボットは、書写書道もその対象になるそうです。人の仕事の半分はAIにとって代わられる、という予想もあります。

何しろ「とめ、はね、はらい」などの運筆はもちろん、墨の濃淡、筆圧の強弱までプログラミングされた手書きフォント(書体)がすでに出来ています。このフォントのソフトを入れて手紙を書けば、手書き文字の活字印刷ができるという具合です。

手足が動かないハンディのある人の代わりに、AIロボットがその人のまぶたの動きの指令で“手書き”したら、その人の表情が出た手紙が出来上がると思います。相当に詳細なプログラミングが必要ですが、私はそう信じたい。AIは弱者の見方でなくてはいけません。ですから、その意味ではAIというかITとは共存していきたいと思います。

「初心不可忘」(初心忘れるべからず)という言葉があります。今年度の学生展・高校漢字部門の指定課題として出題されました。10月28日に東京・中野ゼロホールで開かれた優秀作品展示交流会でも何点か展示されました。その一人、文部科学大臣賞に輝いた大阪の高3女子は講習会で何度か見ていますが、普段からとても勢いがあります。応募作品は配置配列に腐心し、程よく勢いを抑えました。その絶妙のバランスが中央審査委員の先生方の心を射たのだと思います。彼女の日頃の研鑽と心の成長が生んだ抑制です。

AIに、この抑制心がプログラミングできるでしょうか。AIと書写書道の大きな壁となりそうなのは、この「情動」の部分だと思います。AIが、その人独自の心と情が詰まった手書き文字を書く日は遠い先なのでしょう。それはAIが「初心不可忘」と言う心を持つ日でもあるのでしょう。

「あなたの字は眠ってるよ。しゃんとして書こうね」。すると生徒は見違えるほど上手な字を書きます。今日もまた、子供たちの心を思い、注意しながら教室を歩く私です。AIロボットも早くこれが出来るといいですね。

 

第7回総合大会

優秀作品展示・交流会開く

10/28 中野ゼロホール

第7回全国書写書道総合大会の優秀作品約130点を展示した「2018総合大会優秀作品展示・交流会」が28日(日曜日)、東京・中野の中野ゼロホール西館で開催されました。展示ギャラリーには毛筆作品は仮巻きで、硬筆作品は台紙に入れてアルバム立てに立てて展示。当人や家族、塾の先生ら多くの人が観賞しました。

展示会とは別に、学習室4で大会参加者らの交流会も行われ、出品者やその家族らが参加しました。メーンは「学業と書写書道の両立」をテーマに約25人の参加者が行った1分間スピーチ。上手く話せないで涙ぐむ小学校低学年もいましたが、他の人の話しに皆耳を傾けていました。

遠方からの出席者も多く、高知県田野町からは田野小学2,4,5年生3人もが参加。同小の先輩早大生と顔を合わせ、語り合う世代を超えた交流風景も見られました。

助言者として出席した辻眞智子・中央審査委員会副委員長が最後に「皆さん、頑張りましょうね」と優しく語りかけました。交流会では文部科学大臣賞などの受賞者の表彰も行われ、最後に全員で記念撮影も行われました。記念写真は希望者にメールで送信されます。

東・西・南・北

高校3年 橋爪 綾音(大阪・麗鳳書院生徒)

私にとっての書道と看護――文科大臣賞を受賞して

私は将来、看護師を志しています。患者さんの心に寄り添える看護師を目指しています。日頃から書と向き合い、人に感動してもらえる字を書けるように練習に励んできた私にしかできないことがあると思うのです。

看護師でも、大変なことや辛くてやめたいと思うこともあるかと思います。でも、人生の半分以上の11年間、書道をずっと続けてきました。私には継続する力があります。そこを生かして、一人でも多くの患者さんの力になれる看護師になります。

看護師の勉強と書道を両立させ、看護師の道でも書道の道でも尊敬される立派な人になれるように、努力を忘れず、日々専念したいと思います。

編集後記 橋爪さんの寄稿を読んで、キーワードが「感動」と「「継続する力」であることに編集部一同うなりました。それは、まさに書文協が掲げる理念そのものなのです。賞取り競争ではない学びの心そのものです。

橋爪さんは第7回全国書写書道総合大会の全国学生書写書道展で文部科学大臣賞を受賞しました。小学低学年で書道を始め、何度も「もうやめよう」と思いながら11年かけてつかんだ快挙です。「看護師になっても書道を続ける」と周囲に語っていると聞いて「その心は?」と、東・西・南・北への寄稿を依頼し、受けていただいたのでした。

橋爪さんは「人に感動してもらえる字を書けるよう練習に励んできた」と言います。それを実行してきた自分にしかなれない看護師になる、と言うのです。「患者さんに寄り添う」には感動を分かち合うことが大事という考えは、看護の心として素晴らしいですね。そして、つらいことがあっても培った「継続する力」で思い描く看護師道を行く、というのです。

「綾音ちゃん、成長したんだね」と推測しています。人生の進路を考えることがきっかけだったのでしょうか。字まで抑制の利いた素晴らしい字に変わったそうです。おめでとう。  (写真は橋爪さんの受賞作[初心忘れるべからず])