月刊書字文化

~日本書字文化協会機関紙 No59~
平成30年 9月号

一般社団法人日本書字文化協会機関紙
編集長 渡邉啓子
一般社団法人日本書字文化協会
代表理事・会長 大平恵理
〒164-0001 中野区中野2-11-6  丸由ビル301
電話03‐6304‐8212  FAX03‐6304‐8213
Eメール info@syobunkyo.org

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目次

◇2018日中友好青少年席書交流会開催
◇コラム「こころ」(大平恵理)
◇東・西・南・北(ボストン、西片由貴)
◇園児の毛筆作品展(東京都府中市、北山幼稚園)
◇中央審査会9/24

ウエブ版資料編(バックナンバーからご覧ください)
◇資料編①パンフレット「書字教育の書文協」・・・7・8月合併号に掲載
◇資料編②パンフレット「硬筆課題検定指導添削コース」・・・・同


硬筆課題検定指導添削コースは9月から受け付
けを開始。新ライセンス試験は10月号で発表

 

日中友好両国の子供が席書交流会

8/26 中野ゼロホールで開催

中国と日本の子供たちが26日、東京・中野ゼロホールで席書の交流会を開きました(写真)。言葉は通じず、筆法も違うけれど紙にしたためる漢字の多くは共通という“同文の隣国”の子供たち。異なる文化の理解に大いに役立つ交流会でした。

日本にやってきたのは、このほど中国で   開かれた第1回米芾杯国際青少年書道大会(中国国際書画芸術研究会 中国文字博物館、江蘇省教育書道協会など共催)の最優秀者たち。米芾(べいふつ)は、中国北宋で活躍した書家です。中国を中心に約12,000点の応募があり、その中で極めて優秀な成績を収めた7歳から18歳までの中国の子どもたち7人が書家を含めた17人の訪中団の一員として日本に派遣されました。

日本側からは書文教を通じて84点が応募されましたが、そのなかで優秀な成績を収めた人のうち関東近辺の子どもたち11人が参加しました。特に聖徳大学付属女子中学・高校の書道部は5人もが1、2等の最上位賞に輝き、この5人がそろって席書に参加し、交流会を盛り上げました。

2018日中友好青少年席書交流会in東京

「書写書道で漢字文化圏の友好を」

 冒頭に開かれた開会式では、主催者の一般社団法人日本書字文化協会の大平恵理・代表理事会長のあいさつに次いで訪日団の代表で書家の曹元偉(そう げんい)さんが立ち「子供たちは日本が初めてですが、自分の技を向上させるためにやって参りました」と学びの姿勢を強調。「人民の平和に対する熱い思いを知ってください」と語りました。

 来賓として招待された加藤泰弘・東京学芸大学教授は、同大学書写書道教育研究会の代表として日中韓の書写書道交流を熱心に展開している国際派。あいさつの冒頭「中国には毎年行って、いろいろな大学と話しています」と語り、訪中団の注目を浴びました。「書法が漢字文化圏の中心でありたい」とする加藤教授は「それぞれの書法を身を以て知る良い機会です」と席書交流会の意義を語りました。

最後に、聖徳大学付属女子中学・高校書道部の書道部長で高3の安原莉夏さんが「書字文化の交流を強めていきたいと思います」と、歓迎の言葉を述べました。同書道部は小室信男顧問の下、日頃から熱心な活動を続けており、今回の国際大会でも高い評価を受けました。特に安原部長は、数少ない1等賞に輝きました。

「日中友好文化小使者」称え表彰状贈呈

開会式では中国からやってきた生徒9人に日中文化交流促進会(劉洪友理事長)発行の「日中友好文化小使者」の賞状が大平会長から伝達されました。9人は、書道を通じて立派に文化交流の使者の役割を果たしました。

席書交流会は午前中に終わり、午後からはゼロホールのレストランで会食交流が行われ、スマートホンの翻訳ソフトを駆使する姿も。中国側の子供たちには硬筆セットも贈られました。

最後に曹元偉団長から送られた書を囲んで、書文協の渡邉啓子副会長、司会を務めた池田圭子教学参与、設営担当の大平昭芳、企画担当の谷口泰三らがゼロホール前で記念撮影。その後、中国側一行は、桑島智子さん(東京都墨田区、秀雪書道教室主宰)の知り合いで会場近くの書道具店を訪れ、

日本の書具や手本に見入りました。


壁には中国の生徒たちが持ってきた立派な自作の掛け軸が飾られ、日本の生徒にプレゼントされた。お返しに日本からも席書作品が贈られた。


加藤泰弘先生


曹元偉団長、劉培龍・俞暁東副団長


安原莉夏さん

こころ

大平 恵理(書文協会長)

学びの「深化」とは

旧盆も過ぎゆくころ、書文協本部近くの中野ゼロホール(区立もみじ山文化センター)で、立て続けに二つの講習会を開きました。月例日曜日講習会(8/19)と実力養成講座(8/23)です。前者は子ども達、後者は大人が対象です。受講生の層はがらりと違いますが、講師として受講生の前に立って「なんとしても書写書道を学ぶ人の特技にしてもらいたい」「誇りを持って指導にあたっていただきたい」と思いました。

書文協は全国コンクールも開催していますが、学びが賞取り合戦になってしまうことを一番警戒しています。そこで得られるのは、いつも何かに追われたような、満たされない心です。心豊かな学びになっているだろうか、成績ばかり追いかける心になってしまってないか、と思うのです。

「字を書くことを特技にする」とはどういうことでしょうか。簡単に言えば、自信を持って自分の字を書く力を身に付けることです。「一芸としての書写書道」と言われるほどにはなりたい、というのが書文協の目標です。そのための修業であって、一番、二番を争うために腕を磨くのではありません。「成績にはとことんこだわるが、結果が出たら、そこまでに得たものを大切にし次に進もう」を合言葉にしているのはそのためです。

仲間はみんな敵ではなく、一緒に辛い練習を乗り越えていく同志なのです。切磋琢磨(せっさたくま)という言葉は、そういう意味なのです。偏差値が幅を利かす昨今、生きることの根源を見つめて、というとオーバーでしょうか。

特技を身に付けるための修業には、こうした生き方の根本を身に付けるだけでなく、いろいろなプラスがあります。第一に、一つのことを続ける力を養うことです。これは、いろいろな道に通じる潜在能力(ポテンシャリティ)として評価されます。さらに、継続するために両親たち周囲の思いをいっぱいいただくことがとても貴重だと思います。多くの心を頂き、これに感謝する心を養うことはなんてすばらしいことでしょうか。書く技術が進むと同時に、心も知識も豊かになっていって欲しいと思うのです。私たちはこれを「学びの深化」と呼んでいます。今夏、さまざまな取り組みではこの「深化」を合言葉に組み立てました。受講生の反応をじっくり聞いてみたいと思っています。

 

東・西・南・北

ボストン在住 西片由貴

 
異国で教える日本語

アメリカに住む日本人の子供たちに、日本語学校で国語を教えている。学習内容は日本の小学校と全く同じである。子供達は平日に現地の学校に通い、土曜日にだけ日本語学校で日本語を学ぶ。

ひらがなやカタカナ、基本的な漢字80字を学ぶ小学1年生である。家族ぐるみで必死に勉強をしている。子供たちにとってはアルファベットにはない「とめ、はね、はらい」は難しいようだ。しかし最も躓(つまず)きやすいのがカタカナだ。英語を理解する子供にとって、なぜわざわざ英語を日本語のカタカナ表記にしなければならないのかがまず疑問となる。しかも本来の発音とも異なる。教師が発音し、それを書きとらせることを試みた。「コーヒー」などはお手の物だが「チョコレート」や「サンドウィッチ」などとなると、お手上げ状態の子供も多く、中には涙が出て来てしまう子供もいる。

3学期に「おみせやさんごっこ」をする。1年のうちで子供達はここに力を注ぐ。グループに別れてお店を決めて折り紙などで商品を作る。その際、このカタカナの葛藤が子供たちを悩ませる。マシュマロを「マーシメロー」、ラジオを「レイディオ」、グミを「ガミィ」といったように、英語の発音に忠実な音を選び、カタカナを私に聞きながら商品の名前を書く。日本に住む日本の子供たちにはしっかりと訂正して教えなければならないが、米国永住の子供たちが半数を超えているのが実態。ここは目を瞑(つぶ)ることにしている。

編集部から 

アメリカで書写書道の教室が発展するかどうか、注目するケースに出会いました。世界に名だたる文教都市、ボストンで日本人の子供たちに書写書道を教える西片さんは、日本語学校の先生などの仕事をしながら、本業の書写書道教室を運営しています。 

西片さんから第七回全国書写書道総合大会の問い合わせを受けて、ボストンでの教室の存在を知りました。

留学先のハーバード大学で大学美術館にある日本書跡を研究し、母校の大東文化大学大学院で書道学の修士号を取った27歳の国際派。ボストンに永住する子供が半数を占める中で、書写書道の意義をどこまで伝えられるか、日々苦闘しているそうです。

 (写真はハーバード大学美術館のホームページの美術館紹介から)

園児の毛筆作品展
東京都府中市・北山幼稚園で

まだ年中組だった約100人の園児が、昨年9月から月2回、毛筆の正課授業を続けて来た府中市の北山幼稚園で、夏休みの終わりの8月24,25、26日の3日間、作品展示会が行われました。作品は、どれも力作ぞろい(写真)。訪れた保護者らも「幼児でも上手に書けるもんだね、と感心していました。

園児の毛筆授業は、日本の伝統文化に触れさせたい、という北山迪子園長の要請をうけて、書文協が四年前から試行フロジエクトとして取り組んでいます。
月2回の授業で1人約20分、作品製作に励んできました。

筆は書文協の中筆を使いますが、園児たちは初めてみる筆に大興奮。
見学の専門家たちも驚く集中度で練習を続けました。初めは正しい姿勢の保ち方、正しい筆の持ち方から始めます。講師の池田圭子書文協教学参与(写真)が「お椅子と背中の間にげんこつを一つ入れて」「はい、左手ポン(ときちんと置く)」などと園児に語りかけながら授業を進めていきます。

 

書文協の中筆に水をつけて、特殊マットに書くと文字が浮き出る水書きがスタートします。こうして筆に慣れていった園児らは、年長さんになった今年5月に入って墨での仕上げを始めました。 止め、はね、はらいを学び、そして字形に注意することを勉強します。池田講師は「園児でもこんなに書けるんだ」と改めて我ながら感心したと言います。

すでに4期も続けられたこの試行プロジェクトは、日本の伝統文化との触れ合いだけでなく、園児の文字学習の一つとして今後多いに注目されていくでしょう。

 

第7回全国書写書道総合大会
中央審査会を開催へ 9/24中野

7回総合大会は先に締め切られた「ひらがな・かきかたコンクール」に続いて「学生書写書道展・公募の部」「全国硬筆コンクール」が9月14(金)作品必着で締め切られます。

これに併せて「学生展・席書の部」の作品を対象にした中央審査会が9月24日午後1時から、東京都中野区の区立産業振興センター(旧・勤労福祉会館 〒164-0001 東京都中野区中野2丁目13−14)で開かれます。

中央審査会には加藤東陽、辻真智子の正副委員長、中央審査委員と大平恵理会長ら書文教スタッフが出席。各地の席書大会地区責任者の先生が審査専門委員として招聘されます。

専門委員は各自の団体を背負うため投票権はありませんが発言は尊重されます。また、審査の透明性を確保するため、会員が審査会の傍聴希望を申し出た場合、中央審査委員会が認めればオブザーバーとして傍聴が許可されます。希望者は書文教本部にご連絡ください。

 

「ひら・かき」を含め第7回総合大会特別賞を
優秀賞展示交流会は10/28 ゼロホールで

今回から、ひらがな・かきかたコンクールは本賞(特選、金・銀・銅賞)と特別賞の2段階発表としました。全員に贈られる本賞の発表は成績一覧と賞状、副賞が9月初旬までに各団体に発送されました。その上で、9月24日の中央審査会で選ばれた特別賞(応募数の約1.5%)が発表されます。

一次発表分では記念アルバム申込み用紙が同封されています。本賞で特選に入った子は特別賞に選ばれる可能性がありますので、アルバム申し込み後に賞名の差し替えが可能です。

3コンクールの特別賞に選ばれた作品の展示・交流会は10月28(日)に中野ゼロホールで開催されます。昨年の浅草公会堂での展示交流会での参加者討論会では「学業と書写書道の両立」をテーマとしました。今回のテーマは改めて発表します。コンクールへの出品者は誰でも参加できます。